春風
お父さんに頼み、
柚を別の部屋へ運んだあと、
あたしはお母さんに
問い詰められていた。


「一体どういう事なの!?説明しなさい。」
あたしは恐る恐る
今までの事を話した。
もちろん、柚と出会った
あの頃の事も、全て。


「あたしたち、真剣だから。
お母さんが反対しようとも、
別れる気はないから。」
「…それにしても
もっと他のいい人は
居なかったの?
あんな…先の無い子と。」


ショックだった。
お母さんも知っていたんだ。
「…お母さん!!」
思わずお姉ちゃんが止める。
でももう遅い。
「お母さん、ひどい…。
あんまりだよ…。
一生懸命生きようと
してる柚に失礼だよ!!」
あたしはリビングから
走って出ていった。
目には大粒の涙を溜めて。


「真桜!!」
お姉ちゃんの声が追いかけてくる。
でも、それを気にする
余裕など、
今のあたしには無かった。
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