介錯、請け負います
介錯、請け負います
 
都会の夜に、きらびやかなネオンが華やかに咲き乱れ始める。


せわしなく急ぎ足で往来を行き交う人々の陰で、夢破れて栄華から見放された人々が、今夜も路地裏で夜露をしのぐ寝床を探すため動き始める時間。
帰る家を失い、路頭に迷う者達の姿を目にする光景は、もう珍しくない日常の一部となった。


「もう、死のう……かな」


ネクタイを外し、よれよれのスーツを着た一人の男が、灯の落ちたビルの冷たいコンクリートの壁にもたれ掛かり、ポケットに残っていた最後のタバコに火を着けながら呟いていた。
歳は20代前半。
不景気とは言え、まだまだ仕事を選ばなければ働き口は見つかる年頃だ。


「ふうぅ……
大学も出て、それなりに安定している会社にも就職できたが……
やっぱ営業は無理だわ。
ペコペコ頭下げる仕事なんて、やってらんね。
会社辞めたは良いけどさ、明日から無職だし……
ま、俺が消えても誰にも迷惑掛けないからな」

男は一通りの愚痴を吐き終わると、まだ半分しか吸ってないタバコを足元に落として靴底で揉み消した。

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