放課後ハニー
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バサッという音で、遠ざかっていた意識を取り戻した。
手元にあったはずの本が椅子に座った私の足元に落ちていて
視界の焦点は合わなくて
いつの間にか眠ってしまったのだとようやく気が付く。
図書室でいつものように勉強していたのに、どうも集中できないから、と
つい本を読み出したのがいけなかったかな…
夢を見ていた様な
しかもなんだか複雑な。
…この本のせいか。
足元で綴じられたそれを軽く睨み付け
当たり所が違う、と思い直し拾い上げると
机に置かれた栞が目に留まり、今度は舌打ちしたい気分になった。
先週借りた本は休日で読んでしまった。
面白くて、つい相模に勧められたシリーズにも手を出して
昨夜は夜更かししてしまう程のめり込んで。
まったく不覚もいい所。
なのに懲りずにまた読んでしまうとは…。
どの辺りまで読んだっけ?
ページを捲り、見覚えのある場所とない場所の境目を見つけて栞を挟んだ。
深い息を吐いて、机に広げられたテキストやノートに視線を向ける。
なんだかやる気が起きないな…
ぼんやりと思って左腕の時計を見ると、間もなく5時になるところだった。
今日は片付けてしまおう。
さっと鞄に荷物を纏め、図書室を出たところで5時のチャイムが鳴り響いた。
踊り場の窓から見えた空は雲が多く、
だけどそれが夕陽と夜の色を含んで極彩色のグラデーションを描いている。
相模が初めて屋上に現れたのも
こんな空の日だったな…。