揺れる虹
そう言うと、いつも担いでいる大きなバッグを手に車両から出ていった。

すぐに後を追いたい気持ちを必死に抑えた。

ここで今までの半月を無駄にするわけにはいかない。

中村さんが戻ってくるまで、じっと我慢した。

握り締めた拳の中で、爪がキリキリと掌に突き刺さっていく。


「美羽。ごめんな。」


シートを倒し、被っていたハンチングで顔を隠し、美羽の無事だけを祈っていた。










「瞭、ほら、外見ろ。」


突然かけられた声に慌てて外をみた。

被っていたハンチングが足元に転がり落ちていく。

そこには、ホームで車椅子に載せられた美羽が、小さく手を振っていた。


「美羽。」


「大丈夫。東京迄帰れるように手配した。家まで送り届ける。」


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