蝶々
「おはよう」

私は“菜穂”に挨拶を返した。


“釣川さん”
彼女は私のことをそう呼ぶ。

“つてちゃん”
私はみんながそう呼ぶように呼ぶ。


私は名前で呼ばれる方が本当は好きだ。
でも、名字で呼び出した彼女は照れくさいのかなんなのか、名前で呼んでと言っても嫌だという。
自分も名前で呼ばれるのは恥ずかしいようだった。


私はそんな彼女のことを

“菜穂”

と密かに心の中でそう呼ぶようにしている。
< 19 / 79 >

この作品をシェア

pagetop