不可解な恋愛 【完】



「奏音もふにゃふにゃじゃん」


「ん。好きよ、龍」


「俺も」






その唇を覆いつくすように塞いだ瞬間、みぞおちに鈍い痛みが走った。

唇を離して大きく咳きこむ。奏音の膝が、俺のみぞおちにめり込んでいたのだ。

きっとそんなに強い力で蹴られたわけではないのだろうが

完全に気を抜いていた俺にはかなりの衝撃だった。

女から膝蹴りされたのなんか、生まれて初めてだ。






「な、んだよ!」


「明日早いから帰るわ」


「はぁ?」


「今日はひとりで寂しく一夜を過ごしたらどう?」






冷たい眼差しで俺を見つめると、奏音は上半身を起して

覆いかぶさっていた俺の肩を両手で跳ね除けた。

置き去りのワンピースを拾って着ると、また一瞬だけ俺を睨んで玄関へ向かう。

ずるりとソファーに体を預けたまま、出て行く奏音の背中を見つめる。

あーやっぱり、その体のライン好き、とか馬鹿げたことを考えながら。
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