不可解な恋愛 【完】




「急に泣きそうになんないで」


『なって、ない、けど?』


「どうしていいか、わかんなくなるから」


『…ごめんね、』


「謝んなよ」






一層腕に力を入れて、首筋に顔を埋めると、杏奈は身を捩って熱く息を吐き出した。






「杏奈の抱えてる心配事とか、全部俺が一緒に持ってやるから」






借金のことなんか、せめて俺と居る時くらいは、忘れさせてやりたかった。

杏奈と時間を共有して、とても和やかな気持ちで満たされている俺だから、杏奈も同じ気持ちにさせてやりたいのだ。

だけど彼女は、たまに、とても悲しい顔をする。

きっとそれは、俺のせいなのだろうけれど。






『神崎さん、ありがと』


「…ん。」


『だけど、いくら神崎さんでもね、きっと全部は持ちきれないよ』






杏奈はそう言うと、目をそっと伏せた。

横顔が、また憂いを帯びる。

借金とは別の何かで、苦しんでいるのだろうか。




なんだか急に、杏奈がわからなくなった。
< 75 / 158 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop