満ち足りない月
「何だ、その手は」
上から父の低い声が、重力によって落とされた。
さっきと同じ言葉だ。
セシルは今にも再び落ちそうなその雫がまけないように必死に目を開けた。
そして泥だらけの手を力一杯握りしめる。
「私の言うことが聞けないのか!」
―――「ごめんなさい」
目から一つの雫が流れ、頬を伝い、枕を濡らした。
セシルはゆっくりと目を開け、やはり十九年も同じように見てきた天井でないことを確認すると、両手で目を覆った。