曖昧-aimai-
バイトが終わった帰り道。
「〜♪〜♪」

どこかから切なげな
歌声が聞こえてきた。

いつもなら素通りしたと思う。

でも。
あまりにも。
切なく歌うから。

魅入ってしまったんだ。


「〜♪・・・」

歌っていた人は。
私よりちょっと年上の人だった。
髪は澄み切った金。
綺麗な顔立ちだけど。
瞳が切なそう。
風が吹いたら。
消えてしまいそうな人だった。

まるで・・・泡沫。


歌が終わったあと。
その人と目が合った。

「あ・・・」

「なんで泣いてるの??」

「え??」

彼が何を言ってるか
不思議だった。

だって。
両親のお葬式以来
一回も泣いたことがなかったから。

確かめるように自分の手で
頬を触ってみた。

「あ。本当だ・・・」

涙のあとが。
あった。
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