my name
それからパパと別れ、何もない道を会話もなくただ歩いた。
あたしの一歩前を歩く彼の後ろ姿は2年前より少し大きくなった気がする。
でも雰囲気は変わらない。
目の前にいるこの人は確かに亮佑だ。
聞きたいことはいっぱいあるはずなのに。
亮佑がいるってだけで何だかどうでもいいように思えた。
するといきなり立ち止まり振り向いた。
「この公園覚えてる?」
亮佑が立ち止まった場所は公園の入り口の前だった。
でもあたしはこの公園での思い出は何もない。
だから首を横に振った。
「来て」
そう言って公園の中に入っていく亮佑の後を追った。
その公園は小さな公園で遊具が数個あるだけ。
亮佑が真っ直ぐ向かって行くのはジャングルジムだった。
もしかして…。
そして亮佑はジャングルジムの前に着くと再び振り返る。
「この公園で俺たち初めて会ったんだ」
だけどあたしはジャングルジムに近付くことが出来なかった。
足がすくんだ。
あんなの子供の頃のちょっとした意地悪。
わかってるけど…。
記憶はなくても身体がそこに行くなって言ってる。