roulette・2
第二話
次に瞳を開いた時、意識を失って倒れたはずの私は立ちながら何かを話していた。

「雪も降ってきたし、寒かったよね!上がってあったかいお茶でも飲んでいってよ」

ここは……、どこ?……私のマンション?

戸惑う自分とは逆に自動的に動く口が上手く理解出来ず、瞳だけがキョトンとしてしまう。

「美佳……」

低い声で私の名前を呼ぶ目の前の人は確かに祐樹だ。

嘘……、生きてるの?階段から落ちて死んじゃったんじゃ……。

動揺した心とは裏腹に、無理にはしゃぐ自分の声が耳に届く。

「渡したいものもあるんだ。祐樹に喜んでもらおうと思って、一生懸命選んだの」

勝手に出て来る言葉達は、あの惨事が起こる前に私達がしていた会話そのものだった。

という事は、この後私は祐樹から別れを告げられて、死なせてしまうって事?

小刻みに震え始めた指先は、別れへの恐怖なのか、それとも殺意がないとはいえこれから祐樹の命を絶ってしまうせいなのか。

……駄目。このままだとまた祐樹を殺してしまう。どうにかしなくちゃ。

……でも。

「美佳」

祐樹の呼び掛けにぴくんと肩を揺らしたあと、私の唇が再び意志と関係なく動き出す。
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