雪に埋もれた境界線
 機械の音声のような声が聞こえ、陸は首を傾げながらも扉を開けた。

 室内は更に薄暗く、殆どハッキリ見えない。


「真っ直ぐ進んで、その椅子に座って下さい」


 陸は云われた通りゆっくり前に進むと一つだけ椅子があり、そこに腰掛けた。正面を見ると、奥には大きな机があり、薄い布か何かが天井から掛けられているのだろう。机の前に座る一人の影だけが怪しげに映っており、相手の顔は見えなかった。


「よくいらっしゃいました。石川陸さん。私がこの屋敷の当主、黒岩玄蔵です」


 あの影が黒岩玄蔵なのか……。暗さに目が慣れてきたけど、布越しでは顔がハッキリ見えないな。

 それにこの声……。肉声ではない。やはり機械か何かで声を変えているのだろう。


「招待状にも書いたのだが、この度、私の所有する屋敷と財産の半分、誰かに譲りたくてねぇ。こうして来て貰ったのですよ。いくつか質問をさせて貰うけれども宜しいかな」


「はっ、はい」


 陸は緊張のため、声が裏返ってしまった。


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