雪に埋もれた境界線
 色々な疑問を払拭するように、陸はなるべく明るく云うと、久代の手を掴んだ。
 久代もいくらか落ち着いたのだろう、頷くと一緒に部屋を出て食堂へ向かった。

 食堂の扉を開くと、すでにテーブルには木梨がぼんやり座っていた。そして扉の側にはメイドの鶴岡と半田が立っており、お辞儀した。もちろん無表情である。
 陸はメイド二人にお辞儀すると、木梨に話しかけた。


「木梨さん、座間さんはまだ部屋に?」


「そうだろうね……。まだここにきていないから」


 木梨は疲れきっているような口調で云うと、テーブルの上にある水の入ったグラスを持ち、一気に喉に流し込んだ。

 陸と久代もテーブルに着き、ふと掛け時計を見ると、丁度お昼を表示したところで、その時、再び食堂の扉が開いた。

 顔を上げると、そこには座間ではなく磯崎の姿があった。


「座間さんはまだいらっしゃってないようですが、どなたか知りませんか?」


 磯崎は鋭い目で三人を見渡したが、候補者三人は首を振るだけだった。


「そうですか。では仕方がありませんね。食事をしながらで結構ですので聞いて下さいませ。旦那様と今の状況について話しあった結果、このまま予定通り、残った候補者から屋敷と財産の半分を譲る人物を決めることに変更はありません。但し、後に道路が復旧し警察が来るでしょう。その時に、もし選ばれた候補者の方が相馬さんを殺害した犯人だと分かった場合は、取り消させて頂きますのでご了承下さい。座間さんにもこのことをお伝えして下さいますか? 私達屋敷の者が伝えるよりも、皆様のどなたかが伝えた方が、彼にとっては宜しいのではないかと思いますので、宜しくお願い致します」


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