雪に埋もれた境界線
「鶴岡、半田、ここはお前達に任せます。私も行きます、石川さん」


 こうして陸と磯崎は木梨の部屋を飛び出すと、久代の部屋に向かった。

 扉をノックしても返答はなく、磯崎よりも先に陸がノブを回すと鍵は開いていた。
 扉がすんなり開いて、室内を見渡しても久代の姿はなかったので、陸は急いで中に入り浴室のドアを勢いよく開けた。

 そこには座間のように首を吊って死んでいる久代がいた。久代の首には座間と同じくタオルが巻かれ、座間とは違い靴下はきちんと両方履いている。


「どうして……」

 
 陸はショックのあまり、目を逸らすとそれしか言葉が出なかった。
 すると磯崎は顔色を変えることもなく、


「ここから出ましょう」


 そう促し、陸の腕を掴み浴室を出た。

 
「磯崎さん、これは一体どういうことなんでしょうか」


 陸は震える声で磯崎に訊いた。


「私には分かりかねます。しかし木梨さんの部屋にあった化粧の瓶が、彼の頭に傷を付けた凶器だとしましたら、その持ち主である人物が犯人だということでしょうか。そしてその瓶が辻本久代さんの物だとしたら、彼女は木梨さんを殴り、自殺したと。そういうことなのでしょう」


 磯崎は淡々とそう云うが、陸にはどうしても久代が自殺するタイプにも、人を殺すタイプにも見えなかったのである。陸が黙っていると、磯崎は木梨の部屋に一緒に行くよう促した。

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