親友!?幼なじみ!?恋人!?

ごめんね、部長。

ホントはすぐにでも電話したいとこだけど、電車の中だからと思いメールを送った。

一言、“ごめんなさい”って。

自分が醜くて、視界が涙で滲む。

こんなに嫉妬深くてどうすんだ。部長に愛想つかされてもいいのか。しっかりしろ!

そう思うも後悔ばかりが胸をしめつけて、電車の窓からみえる景色は輪郭がはっきりしない。


「泣くくらいなら、もう二度と俺を置いていくな」

ふっと香ってきた馴染みのある匂い。

それとともに目の前の窓に押しあてられた大きくて愛しい手。

そして、苛立ちを含んだ大好きな彼の声。

涙がこみあげてくるのを必死におさえながらゆっくりと振り返る。

少し怒ったような部長の顔からわたしの表情を見るないなや呆れた表情になったのを、涙で霞む視界からもはっきりとわかった。

部長のスーツの襟を掴むと、謝ることしかできなかった。

「ごめっ…さ…、ごっ…なさ…い」

そんなわたしに部長はなにをするでもなく、次の駅に止まった瞬間腕を掴まれホームにおりた。

素早く階段下の小さな隙間に移動すると、部長は手の甲で軽くペチっとわたしのほっぺを叩いた。

「もう…置いていかないと約束するか?」

その瞳は優しくて温かくて、涙を止めることができなくなっていた。

二度と大きく頷くと、「約束する」涙声ではっきりと言えたかはわからないけど、微笑んでくれたからそれ以上はなにも言えなくなった。

「けど…やっぱり今日、俺を置いていったこと、許せないよな」

「やだっ!どうしたら許してくれる?」

焦ったからかまた部長の襟を掴む。

部長は今までになく意地悪そうな表情で、でもわたしを見る瞳は温かくて、

「これから名前で呼べ。部長じゃなくて、名前で。そしたら許してやる」

そんな発言に真っ赤になったのは言うまでもなく、でもやっぱり嬉しい新鮮は彼とともにいなきゃだめなんだ。




「…まっまっ…まっ…雅樹さん」


――――――――…

初めて雅樹さんの名前を呼んだ嬉しい思い出。


fin.

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