この腕の中で君を想う



こんな偶然って…


もう一度目を凝らしてよく見る

横顔しか見えないが、確かにアイツだった




…気付くか?

俺は未だに慌てふためいている奴の顔をジッと見つめた






これは賭だ


もしアイツが俺に気付いたら、鞄に入ったままの手帳をアイツに返す




気付かなかったら…そこら辺のごみ箱にでも捨てる



我ながら自分勝手な賭だと思う

こちらに向く可能性はあるかもしれないが、気付く方が確率的にかなり低い



だが、気付いたらかなり面白いだろう


己の快楽に忠実な俺は、そんな僅かな期待を胸に秘めて、他人に白い目で見られない程度にアイツへ視線を送り続けた



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