幸せな結末
一也さんが拳で壁をたたいたからだ。

けど、たたいた拳は震えていた。

「――何をやってんだよ……」

震える声で、一也さんが呟いた。

「――あいつは、何をやってんだよ……」

その呟きはイラだっているのか悲しんでいるのか、私にもよくわからない。

声をかけてあげたいけど、言葉が見当たらない。

何もできずに、ただ一也さんを見つめることしかできなかった。

私たちの間に、沈黙が流れた。


どれだけ、そうやっていたのだろう?

その場を裂くように、電話が鳴った。

電話の音に気づいてないと言うように、一也さんはまだ黙っている。

止まることを知らないと言うように鳴り続けている電話に近づくと、私は受話器を手にとった。

「もしもし?」

「若宮か?」

聞き覚えのあるこの声は、
「東雲さん?」
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