ヒカリ
あれから5年がたって変わったことがいくつもあった。

高杉が私に名前をくれた。

私には名がなく、前は護衛や番号で呼ばれていた。

小さいころ両親に名前を付けてもらったけど、もうとっくに忘れてしまった。

どんな名前だったのか、どうして忘れたのか

後悔ばかりだったけど高杉が名前をくれたから・・・。

そして私の名前は

「おまえは紅桜だ」

「・・・紅桜?」

「赤く染まり、戦場で華麗に舞う桜」

「・・・私の名前?」

「あぁ」

「・・・ありがとう」

「なんだ今日はやけに素直だな」

「・・・からかうな」

嬉しくて涙がでてきたのをばれないように高杉のほうをみない。

きっとあいつは気づくんだろうな。

でも、止めようのないこの涙はどんどんあふれ出てきた。

高杉は部屋から出て行った。

空気を読んでいるつもりなのだろうか。

部屋に居てくれるほうがよかった。

涙がどんどん出てくる。

あいつに泣かされるとは思わなかった。

「・・・私、おかしい・・・」

自嘲じみた笑いを洩らし涙をつよく擦って部屋から出た。


◆◇◆◇◆◇◆◇


江戸の町を歩く。

江戸はいつもにぎやかでたのしそうな人たちが多い。

でも、楽しそうな人だけではないらしい。

「やっやめてくださいっ」

1人の女の子が集団の浪士に絡まれている。

「ちょっと酒に付き合えって言っただけだろ」

「いっ急いでるんです」

「いいじゃねーかよ」

会話が聞こえてるにも関わらず江戸の人たちはいそいそと知らんぷりで歩いていく。

「はぁ」

私はため息をこぼし、その女の子のほうへと歩く。

「・・・離してやれ」

低い声で唸ると男は一瞬驚いたようだが

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