君が必要とする限り


電車に乗って、約1時間。


足取りは決して軽くない。
むしろ、重くて重くて
立ち止まってしまいそう。


でも、私は行かなきゃいけない。必ず。恨みを、晴らすために。





「大野さん、今日はいつもと違うあちらの場所で待ってていただけますか?」


受付の看護師さんは、必要以上に優しく告げた。


この人だって、ほんとはこんなに感じ良くしたくないはずなのに。

…なんて人間の裏を常に考える私。


「わかりました。」


だから私も、微笑んだ。
必要以上に優しく。



案内されたのは、いつもの待ち合い室ではなく


少し隔離された、個室だった。


白い壁に、白い机。


開放的な大きな窓が、唯一病室とは思わせなかった。




< 15 / 123 >

この作品をシェア

pagetop