君が必要とする限り


「さっきはごめんな。今、家に着いたから。」


『いや、俺は全然良いんだ。
…なぁ、隆太。』


「なに?」


『お前、今まで、大野亜矢子に会ってたのか?』


「………。」


『会って、たんだな?』


「…うん。」


『もしかして、肉体関係…


「言うな。それ以上は、言うな。」


『…わかった。』


電話の奥で、深いため息が聞こえた。


『お前がそんな夢中になるなんて、その女もありがてぇな。』


そう言ったあと、


『隆太。今から言うことを、落ち着いて聞けよ?』


鼓動が、早まったのがわかった。携帯を握る手に、汗が滲む。




< 85 / 123 >

この作品をシェア

pagetop