ポチ。

彼のことを知っている人間がいるとすれば、それはごく限られたものになるだろう。


友人。
友人の家族。
友人の友人、それもごく親しい人。

わたし。




彼の名前はポチ。

たぶん、雑種。

中型犬。

何歳かは知らない。

おじいさんだったようにも思えるし、もしかすると若かったのかもしれない。




――――いまとなっては、もはやどうでもいいことにも思える。



重要なのは、彼が確かに存在したという事実。






彼に出会ったのは、いつのことだろう。


もう、思い出せないほど昔のことだ。
< 2 / 15 >

この作品をシェア

pagetop