たとえばあなたが



「…どうして泣いてるの?」

小山の声に我に返ると、頬を涙が伝っていることに気がついた。



「あ」

慌てて手の甲で拭う。

「どうした?」

小山がやさしく肩に手を回して、心配そうに覗き込んだ。



「なんでもないの、気にしないで」

そう言ってみるものの、拭っても拭っても、涙は溢れて止まらない。

キラキラ輝くイルミネーションが滲んで見えた。



「…千晶…?」

やさしくされるほど、余計につらい。

自分に幸せになる資格なんてないのに、と苦しくなる。



「……こんなに……」

千晶は、声を振り絞るように言った。

「ん?」

「……こんなに幸せで…いいのかなって……」

肩に回した小山の手が、一瞬ピクリと動いたのを感じた。




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