たとえばあなたが



思いを遂げると決めた日から、ふたりは毎週土曜日、この部屋で会っていた。

何かあったときも、何もないときも。



これからのことを熱っぽく語り合う日もあれば、今日のようにただ座っているだけの日もある。

それでも崇文はいつも携帯電話に注意を払っていた。

いつ、どんな連絡が入るかわからない。

今日も崇文は、テーブルの上に携帯を置いて、千晶が淹れた紅茶に口をつけた。



「…やけにいい香りがするな」

淹れているときから漂っていた、花のようなフルーツのような香り。

「今日の気分にぴったりじゃない?華やかでしょ」

「…よくお分かりで」



逆に今日のお前には不似合いだな、とは口が裂けても言うまい。



崇文がもう一度マグカップを手にしたとき、携帯が鳴った。




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