たとえばあなたが



数日後、和子の地元で告別式が営まれた。



「近くにいるってことだよな」

泣きじゃくる千晶の横で、崇文がポツリと言った。

千晶も、そう思った。



でも、わからない。

誰なのか。

なぜ千晶や崇文でなく、和子だったのか。



告別式の会場には、不可解な死を遂げた女性に群がるカメラマンたちの姿があった。

彼らの存在は、千晶にまたあのときの光景を甦えさせる。

和子の死を悼んでの撮影ではない。

事件に対する興味本位のシャッター音に、千晶は気分が悪くなった。



【みなさま、最後のお別れを…―】



場内にアナウンスが響く。

千晶と崇文は、他の参列者に混ざり、棺で眠る和子に最後の別れを告げた。



色とりどりの花に囲まれて、和子は穏やかな顔をしていた。




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