たとえばあなたが



さりげなく切り出したつもりだけれど、声が硬くなってしまったかもしれない。



「…何が?」

崇文の返事も、本当はわかっているというニュアンスだった。



萌の興味が伸びたラーメンに向けられてからは、小山のことが話題に上ることはなかった。

けれど、千晶の心の中ではいつまでもそのことが引っかかっていた。



「本当に、同じ人だと思う…?」

崇文は、いやぁ、と言って頭を掻いた。

「俺、その店にいたっていう男のこと見てないから、わかんねぇや」

「まあ…そう、よね」

西日が強烈に街を照らし、あちこちのガラスに反射して眩しかった。



「千晶、もし、そいつと小山さんが同じだとしたら、何か気になることがあるのか」

と聞かれて、千晶は昨日の電話のことを思い出した。



「徹って、自分のことは話さないけど、私の行動をすごく知りたがるっていうか。なんかそういうところがあって…」




< 309 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop