たとえばあなたが



千晶は、コットンに化粧水を染み込ませながら、萌の明るい笑顔を思い浮かべた。

いつも『オトコが欲しい』を連発している性格とは裏腹に、萌の笑顔はまるで子供のようだ。

邪気がなく純粋に楽しそうに笑う萌は、千晶の目に眩しく映る。



きっと自分には、一生できない笑顔。



千晶は小さくため息をついて、コットンを肌にあてた。

ひんやりとした感触が風呂上りの頬に気持ちよく、残業で疲れた肌が潤いを求めているのを感じた。



(部長が急に残業なんてさせるから、おかげで余計なパワー使っちゃったじゃない)

来週配属になる中途社員のための研修資料作成を頼まれたことで、急遽発生した残業。

おかげで崇文にも怒られる始末で、心身ともに疲れてしまった。

疲労は美容の大敵だ。



千晶は、クマに良いと勧められたアイクリームを薬指に取って、目の周りをやさしくマッサージした。

そして、だんだん心地よくなる感覚に勝てず、そのままソファに横になって眠りに落ちた。








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