たとえばあなたが



週が明けると、それまでの秋晴れが嘘だったかのように雨が続いた。

もう週の半ばの水曜日だというのに、月曜日からずっと、雨雲は立ち去る気配を見せてくれない。

千晶は、朝からなんとなく重苦しい気分でデスク上のパソコン画面を見つめていた。



「おーい、木村!」

呼ばれて顔を上げると、部長が千晶に向かって手招きしていた。

「はい」

部長の隣には、見慣れない長身の男性が立っていた。

「彼、今日からウチに配属になる小山さん。席まで案内してやってくれ。頼んだよ」

部長は挨拶がわりに軽く手を挙げて、さっさと行ってしまった。



「え?ぶちょ…」

呼び止める隙を与えず、その姿はあっという間に見えなくなった。

案内しろと言われたけれど、振り返って室内を眺めてみれば、新入社員のために用意した席は目と鼻の先にあった。



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