たとえばあなたが



メールの署名にある電話番号を押すと、

…プップップッ

と接続音が聞こえて、コールが鳴り始めた。

…トゥルル…プツッ

『はぁい、アートフィールの中西でぇす』



(…うっ)



間延びした声がダイレクトに耳に飛び込んできて、千晶は受話器越しにおののいた。



(そうだ…担当、この人だった…)



今回の展示即売会の話が持ち上がったときから、幾度となく打ち合わせをした相手。

こちらの話をちゃんと聞いているのか疑わしくなるほどの曖昧な返事をするわりに、書類などの契約書はきちんと記入してくれていた。

それでも、電話でしか話したことがないとはいえ、千晶はこの中西礼子に対して一度も好感を抱いたことがない。



『もしもぉ~し?』

礼子が、怪訝そうな声を向けてきた。

言葉に詰まっている場合ではない。

千晶は、気を取り直して姿勢を正した。




< 69 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop