たとえばあなたが



「まあいい。それで、省吾はなんて?」



「そうそう、あいつ昨日コンビニで、おにぎり3つポケットに入れて出ようとしたら、中にいた客が偶然お巡りだったんすよー」



若い男は、さもおかしそうに笑っていた。



「超~不運すよね。おにぎり3つっていやぁ、300円ちょいじゃないすか、それで…―」



―…千晶は、この男のこういうところが大嫌いだった。



焦らしたり、わざと遠まわしに話してみたり、肝心なことをなかなか言おうとしない。



苛立ちが募って、人差し指で黒いテーブルをコツコツ叩き、



「ねえ」



と、上機嫌でしゃべり続ける若い男の言葉を遮る。



「さっさと言うつもりがないなら、その省吾ってのに聞くから、ケータイつないで」



千晶のただならぬ様子に、



「あ…すんません」



と姿勢を正して、若い男は「中西信行」について話し始めた。
























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