異世界にて

 菖蒲はハッと我に返ったように振り向き、ダルクを凝視する。


「……っ!?わたし……今っ…!」


自分の手を見つめ、ようやく自分のしたことを理解したようだ。


「あ…っ、わたしっ…!なんてこと……」


「別に、気にしなくていい……」


ダルクは一歩後退し、菖蒲を見つめると、目を細めた。

……震えてる?

そう、菖蒲は震えていたのだ。

そしてそれは、今にも壊れそうな程、儚く、脆く見えた。


「お前、どう――」


「おい、銀髪野郎」


ダルクの声が、菖蒲の声と被る。

そして、この口調は……


「おれは今日、この部屋から一歩も出ない。し、飯も食わなくて構わん。だから、誰も部屋に入れるな」
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