〜初恋〜アナタに溺れる
私の身体を起こしてそのままタクシーに乗り込んだ。

「あっ、制服のまま。しかも財布と携帯以外会社だし…」

「ごめん…私の、せいだね」

「いいって。たいした荷物ないから」

迷惑…かけちゃったね。

仕事も途中だし。


あとで、ちゃんとお礼するね。








「適当に座って。今あったかい物いれるね」

ソファに座って財布と携帯をガラステーブルに置いた。

「ふぅ…」

なんか、一気に疲れちゃった。

まさか、健哉が浮気してたなんて…

微塵も疑わなかったよ。

あ…

でも、この前いつもと少し様子が変だった。

もしかしたら…夜の”付き合い”とやらも仕事じゃなくて、あの子と会うための嘘?

だとしたら、いったいいつから?

「はい、どーぞ。」

目の前に手渡されたマグカップには、温かいココア。

「ありがと…」

ゆっくりと飲み込む。

身体の芯からじんわりと癒されていく。

「…おいしい」

私の隣に腰を下ろした志穂が、優しく問い掛けてきた。

「少しは…落ち着いた?」

「うん…」

そのまま志穂は口を閉じた。

きっと私から話すのを待ってくれてるんだ。

静かになった部屋には時計の秒針の音だけ…。





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