犯人ゲーム



けれど胸倉を掴まれた男子は薄く笑う。


何がおかしい。


「……お前だって、聞いたんだろ?」


男子はそう囁くように言う。


陽一にしか聞こえない位小さな声で。


「あいつが『犯人』だって、聞いたんだろ?」


「……なん、で」


陽一は愕然とした。


……なんでコイツがその事を知っている?


それは僕と……。


陽一は何ともなしに振り向いた。


肩越しに覗いた先の遥の銃口が戦慄いた。


「……なに、よ」


遥は小さく、けれど確実に鼓膜を揺らすそれ。


陽一は思う。


なんで泣いているだよ。


遥の頬を伝う水滴はオレンジのライトに照らされて。


それはまるで夕日の残照に抱かれたかのように見える。


涙が、顎の切っ先から一粒流れ落ちて。


乾いた銃声が室内の静寂を切り裂いた。


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