【完】君の笑顔





「……やっぱダメ。行けない」


申し訳無いけれど……とゆっくり伝えれば、岡本さんはムッとした表情になる。



「何で?用事があるとか?」



怒っているみたいだけれどそれを口にはまだ出さず、理由を聞いてくる。



僕は黙って首を横に振った。



「じゃあ何で」



苛ついた声を出した岡本さん。



「……いざというときが困るから。
僕は近くの本屋とか、いつもみたいにそこら辺に行きたいのかと思ってた。

それならいざというときにすぐに病院に戻って来れるけど……ショッピングセンターはすぐに戻ってこれる距離じゃない」



本屋……とかの近場ならまだ良いけど、ショッピングセンターは駄目。



岡本さんは病を抱えてるんだから。



「大人しくしてたら発作は起こさないでしょ?」



「何かあってからじゃ遅いんだ。
検査を受けて、きちんと退院してから行った方がいい」




何かあってからじゃ。



後で『行かなきゃ良かった』と後悔しては遅いんだよ。



後悔する事も出来なくなるかもしれないよ?








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