瑠璃色のアバランド
王都までは五日ほどかかる、とハインは言っていた。
もう少し近付けば泊まるところもあるが、今日明日はこのまま休み休み走り続けるらしい。

この世界のことをまだまだ聞きたかったのだが、ここまでの旅が長かったのだろうか、ハインは一言謝ると、すぐに後ろの方で寝入ってしまった。


蹄の音と、風の音。
幌の隙間から遠くに見えるのは、先程教えてもらった古い寺院跡だろうか。
時折魔女の声のような隙間風が、幌の中に入ってくる。


馬車に揺られながら、優太はこれまでの事を思い返していた。

最初は夢のようだとはしゃいでいた自分だったが、いざこうして少しづつ現実を目の当たりにすると、先程の振る舞いが恥ずかしくなってくる。

「自分では冷静な方だと思っていたけどなあ…」
クラスのみんなが騒いでいるときもそう。妹が懐いてきてもそう。
醒めた自分が遠くでボンヤリと見ている、何時もそうだった。

だからこそ、さっきの自分の振る舞いがなんだか子供っぽく思えるのだった。


チラリと真司の方を見てみた。鞘に入った短剣を玩びながら、窓の外をぼんやり眺めているようだ。

−夕べ自分が行った提案を、珍しく黙って聞いてくれたシンちゃん。
この世界に関しては、僕の方が詳しいと思ってくれたんだろうか。
それならなおのこと、僕が頑張っていかなくちゃいけない。

そう呟くと、優太は昨日真司が目覚めるまでのハインとのやり取りを思い出していた。

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