たった一人の親友へ
隆也は最後にって、あたしをぎゅっと抱きしめた


これからはもうこんなことしてくれる人もいないんだね


隆也が帰ろうとすると


友香が気まずそうに部屋から出て来る

どうやらあたしたちの声が聞こえていたらしい


「ねぇ、隆ちゃん。
お姉ちゃんと別れても、また家に来てくれる?」


「うん。もちろん」


隆也は笑顔でそう答えると、友香は涙を浮かべながらも笑顔で自分の部屋へ戻って行った

きっと友香も隆也に支えられた一人だから。



それからあたしたちはゆっくりと玄関へ足を進めた


これが本当に最後なのかな


自分で伝えといてまだ実感が湧かないよ


隆也はくるっとあたしの方を向いて


ここでいいからって


そして最後にあたしにこう伝えた


「別れても、俺ら嫌いで別れたわけじゃないよな?

だから俺はこれからもさなの一部でありたい

だから何かあったら俺に頼れ。

そんぐらいいいだろ?」


あたしは笑顔で頷いた


「じゃぁ」


そう言ってあたしの家から去っていく隆也


隆也の後ろ姿を見ながら


あたしは張り詰めた糸が切れたように


泣くことしか出来なかった


< 142 / 265 >

この作品をシェア

pagetop