深想シンドローム

・過去の傷跡、理由。



甘い香りが漂う、とあるファミレスの一角。


ただ今、梅雨真っ只中。

そのくせ、何故かここ最近ずっと快晴続きの6月中旬。


そんな中、ついに来た。


――あたしの大っ嫌いな、あのイベントが。





「体育祭とか本当ダルーイ。」

テッカテカにグロスを塗ったヒナちゃんは、枝毛を探しながら心のない声でそう言った。

ギクリ、と心臓が脈打つ。


「てか、何でこの時期なのって話じゃない?」

「だよね。わざわざ梅雨の時にやる必要ないのに。」


明日香ちゃんはチョコケーキ、ちづちゃんはアイスクリームをそれぞれ口にし、さも面倒くさそうに呟いた。

ヒナちゃんはと言えば、引き続きダイエット中らしく。

お店に入ってから口にしたのは、おかわり自由のお水だけ。

どうやら、夏に向けて本気で彼氏を作るんだとか。


そして一方のあたしは
みんなの話に参加することもなく、一人特大パフェを頬張っていた。



甘いモノを食べてる時は幸せだ。

この口いっぱいに広がるチョコと生クリームのコラボが、何とも言えないくらい幸福な気分にさせる。

そこに甘酸っぱいフルーツが乗っかってるなんて、パフェは本当に最強のデザートだと思う。



…なのに、何で?



「ねー、みぃこもそう思わない?」



何で今、体育祭の話なんてするかなぁ。







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