深想シンドローム

・あなたはひとりじゃない。



あたしが屋上をあとにした足で向かったのは。



「失礼しますっ!」


もちろん、職員室だった。



勢いよく開かれた扉に
職員室に居た先生たちの動きが一斉に止まる。

けど、頭に血が昇ってて何も目に入らない。


あたしは迷わずある先生の元へ早歩きで向かってゆく。


「紅林先生!」

「望月?お前、今授業中じゃ、」

「ミチルくんを、体育祭に参加させてあげて下さいっ!」

「ええ!?」


紅林(くればやし)先生は、あたしのクラスの担任。

年は40代半ばで
体育教員であり、体育祭の指揮を執ってるのも、もちろん紅林先生なのだ。


これもきっと、何かの巡り合わせに違いない。


そう思っていたあたしに

「ミチル、ってB組の野崎か?」

と紅林先生が眉をひそめた。



あたしはすかさず「そうです!」と答えると、紅林先生は困惑したように頭を掻いて言う。


「望月は知らないと思うが、あいつは…。」

「知ってます、全部!」

「え?」


キョトン、と目を丸くする先生へあたしは職員室全体に響き渡る声で言った。


「でもミチルくんは悪くないじゃないですか!」



そう、ミチルくんはあの事件の

一番の“被害者”なんだ。





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