王国ファンタジア【氷炎の民】ドラゴン討伐編
第6章 杞憂
 王は早々に退席し、続いて宰相による任命式がはじまる。
 またもや長々しい式次第が始まったが、あのファンタジア国王の頭を下げる姿に毒気を抜かれたのか今度は皆、さして文句を言うものもいなかった。
 ただバジルは欠伸しながら小声で

「こりゃ、ばっくれて正解だな」

 と言ったものだから、思い切りグレードに無言でにらまれた。

 激しかった雨音と雷鳴はすでに治まってきていた。
 後の扉が音もなく開くと、漆黒に銀の髪が入り混じった不思議な髪色の少女とひときわ目立つ銀髪の長身の青年が衛兵に案内されて中に入ってくる。
 二人とも悪びれた風もなく、壇上の宰相から睨まれても気にかけた様子もない。

 宰相はけっきょくそれ以上は何もせず、任命式を続ける。
 レジィは二人を認めて、あからさまに安心したような顔をした。
 戦士たちは一人一人、壇上に呼び出され、任命書と徽章を渡され、くどくどとファンタジア王国の誉れに恥じぬ働きをだとか、国王陛下の期待に応えるようにとか、釘を刺された。
 特に、遅刻組のサレンスとクラウンには長い説話が続いたが、二人とも申し合わせたように涼しい顔をしているばかりで、宰相のいらいらを増しただけだった。

 そんな無駄に長い任命式が終わると宰相は退出し、後をファンタジア将軍と名乗る口ひげを蓄えた屈強そうな男が引き継き、作戦を説明した。
 生え抜きの軍人らしいきびきびとした説明振りである。
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