crystal love
「ねぇ。父のお気に入りのスポット
見せてもらった?」

無理矢理感は否めないけど
喉に感じる感覚を逃すため
話題を変えた。

「ああ。見たよ。面白かった。
ビルの谷間に夕日が沈むんだ。
逆光でね。不思議だったな。
幻想的っていうのかな。」

さすがは、お父さん・・・

一連の行事というのか

マンネリと言おうか
なんというのか・・・

早速、連行した様子だな。

「私も小さいころ、
よく連れて行かれたんだ。
あの頃は、なんとも
感じなかったけど
何だかグラスみたいでね。」

「ああ、わかる。俺も思った。
フィズみたい。
ゆっくり果物が
カクテルの中に
沈んでいく様に見えるな。」

中々詩的な感想を述べる。
今度は、こそばゆくなってくる。

なんにしても、彼が
素直すぎるのが問題。

一緒にいるほうが
照れくさくなる。

「そういえば、
お父さんのサイドボードに
スコッチがはいってるの。
分けてもらおうか。」

彼と同じ空間にいることに
何だかドキドキして
そういえば。
 

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