オレンジ色の携帯
彼女は物珍しげに足元の水を見ていたけど爺さんに話し掛けられて顔を上げた。
「えと…こんにちは」
控えめな挨拶に爺さんは笑みを更に深くして目が糸のように細くなる。
「ん、良い娘っ子そうだ。」
喉を猫みたいに鳴らして夕爺は店の奥に引っ込んで行った。
「行く?」
また足元を眺めだしていた彼女は俺の声に慌てて見上げてくる。
「は、はい」
「この店ど?」
「好き…」
…どくんっ
他意はないってわかってるけどストレート過ぎるその言葉は俺に大きなダメージを与えてくれた。
マジ惚れてる。
「そ、そっか。…良かった、な」
口が思うように動かない歯がゆさを生まれて初めて経験した。
…人の口みてぇ
変なことを考えつつ俺の特等席に彼女を案内した。