愛しい君へ


「ぅん、熱は引いた。とりあえず、病院行くぞ」
「ぅん」
あたしはまたバイクに乗って病院へ向かった。

「ぅん。もう熱の心配はないよ。ぢゃあお大事に」
医者の人もそう言ってくれた。

「梨李、龍哉君のとこ行くか?」
龍哉君・・・。
確認したいことがある・・・。
「・・行く」
「ょし。ぢゃあ行こうか」
212号室の前で止まる。
コンコン
「はい」
慎耶でも実美でもない声が聞こえた。
「お前!起きたのか!」
兄ちゃんは誰かに声をかけ、焦って入って行く。
あたしもその後ろに隠れるように行く。
そしてその人の顔を見る。
「梨李!心配かけてごめんな!」
「龍哉君・・梨李・・龍哉君の記憶ないんだ・・・」
「ごめんなさい・・・」
兄ちゃんは言った後にあたしも言った。
でもその人は悲しそうに笑った。
「いいよ、気にすんな。忘れてんなら俺が思い出させてやっから。焦んなよ!」
そしてその人は・・。

「梨李、こっちおいで?」

ふと夢で見たのを思い出す。
川原で誰かを待つ。
そして誰かがあたしの名前を呼ぶ。
あたしは嬉しそうに抱きつく。
「・・大好き!」
「俺もだ、梨李」
あたしは誰かの名前をたしかに呼んだ。

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