愛しい君へ
家族


『梨李、ご飯だよ!』
ふとお母さんの声が聞こえた。
そんなはずないと思ってても振り返る。
そこにはお母さんとお父さんと結城兄ちゃんと唯兄が
ご飯を目の前にして座ってる。
『ぇ・・・?』
『ほら、梨李。早く来ないと結城や唯に食われるぞ』
お父さんが笑って新聞を開く。
『梨李、早く来い。お前の好きなもん、唯が食っちまうぞ』
『俺はそんなことしない!』
楽しそうな唯兄と結城兄ちゃんと会話。
でも、一瞬にしてその笑顔は消えてしまっていた。

ずっと夢見た家族。
ずっと憧れてきた家族。
本当は傍に居て欲しかった。
あたしを1人にしないで欲しかった。
これからずっと一緒に居てくれると思ってた。
急すぎだよ・・・。
あたしは・・強くない・・・。
本当は寂しいんだよ・・・。
でも・・唯兄には迷惑かけれない・・・。
折角部活始めて楽しい時期なのに・・・。
身勝手な理由で部活を辞めてほしくない・・。
だヵらわがままは言えないんだ。

『お母さん・・・お父さん・・・。戻って来てよ・・・』

何度も1人になると泣き崩れていた。

でも中学校に上がり、家に居る時間が愕然と減った。
夜遊びを始めた。
唯兄にも何度も止められた。
でも止めなかった。
家に居たら崩れそうで。
強がって築き上げたものが崩れそうで。


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