きいろいアヒル
2・It is not possible to meet two another degrees
「あー、また0点とっちゃったよ」



ぽつり。隣の席の男の子が、誰に言うでもなく呟いた。



「なんだよ、沢原。れ、0点……?」



「ある意味すごいぞ、それ百点とるより難しいんじゃないか」



「わざと白紙回答したとか?」




と、彼――沢原くんの呟きを聞いて、人だかりができた。



出席番号順に、この間やった期末考査の結果を返されているんだけれど。



みんな、返されたテスト用紙を見て赤くなったり青くなったりしている中。



沢原くんは、冷静だった。


沢原くんの点数を見て、自分の点数はまだマシだ……ああ、よかったと皆が彼をとり囲んで安堵の息を漏らしていた。



渦中の人は、片手で頭の後ろをわしわしっ、と掻きながらテスト用紙を机の上に放った。



「手、抜いたんだろ、陵」



人だかりのひとりが、沢原くんに言った。



“リョウ”という響きに、私は胸を鈍く突かれた。
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