きいろいアヒル
「ごめんな。俺が0点とったばかりに、とばっちりくらわしちゃって」



「いや……」



ちゃんとわきまえてるじゃないか。わかってるなら、いい。



教室の中には、私と沢原くんしかいない。



うちのクラスは、掃除して帰りのショートホームルームが終わって、さよーならーしたら、皆一斉に教室から出て行く。



友達と遊びにでかけたり、ショッピングに行ったり、部活にいそしんだり……と、活発 なクラスだ。



そもそも、そういう発散の時間がなければ、高校生活なんてやってらんない。



私も家に帰ってコーラ片手に本を読んで、ダラダラしていたい気分だった。



それなのに、私が“先生”しなきゃいけないだなんて……トホホ。



しかも、今日初めて言葉を交わした人相手にだなんて。



私は、小説を閉じ、カバンの中にしまった。



沢原くんは、だらーっとした格好のまま、教科書をパラパラとめくって、ため息をつい た。



「俺だって、勉強すればいい点とれるっつーの」



なんてボヤいている。



だったら、最初からやれっつーの。



私は心の中でボヤいた。
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