きいろいアヒル
7・All unpleasant things
昨日は沢原くんの前で、泣くだけさんざん泣いて。



それで結局勉強どころじゃなくなって。



沢原くんを残して、先にそのまま帰ってしまった。



そして、今日。



放課後、いつものふたりきりの教室。



沢原くんは、私に何も尋ねようとはしなかった。



いつもの陽気な感じで、“よろしくおねがいしまぁす”と、机をくっつけてきた。



沢原くん、気を遣ってくれているのか、それとも無関心なのか……ともあれ、昨日のことは自己嫌悪。反省。子どもみたい。



だったから、何も聞いてこようとしない彼は、ほんとありがたかった。



沢原くんは、今、黙って問題を解いている。



私はその沢原くんの、アヒルちゃんのシャープペンをじっと見ながら、ぼんやりとしていた。



「そんなに興味ある? このアヒル」



不意に、彼が笑みをたたえながら、顔を上げた。
< 37 / 81 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop