甘い恋の誘惑

…風化。

ミキちゃんが行った後、あたしは頭の片隅でその言葉を思い浮かべ、ダラン…と崩れるようにテーブルにへばりついた。


仕事上、あたしは“先輩”と言う立場なのに、仕事から掛け離れると、なんだかミキちゃん達が先輩に見えてきた。

普段、ワイワイ、ワイワイして馬鹿騒ぎしてんのに、こんな時に限って真剣に話すんだから…


Γ…なんか、もう嫌」


ため息混じりに呟き、顔を伏せると、


Γ何かあった?」


不意に聞こえた声に、あたしは咄嗟に顔だけを上げた。

見つめる先には、さっきミキちゃんが座ってた場所に薄ら笑った雄二さんが座ってた。


Γあ、いや…」


曖昧に呟き、あたしは髪を整えながら身体を起こす。


Γアユちゃん働き過ぎじゃない?」

Γそんな事ないですよ?」

Γそうかな?最近、いつも朝からラストまでじゃん」

Γまぁそうですけど…。よく知ってますね」

Γまぁね」



苦笑い気味で言ったあたしに雄二さんは小さく呟き薄ら微笑んだ。


Γアユちゃんにさ、」


雄二さんから続けられた言葉に下に落とした視線がまた上へとあがる。

雄二さんを身構えるあたしに、


Γ話あるんだけどさ」


そう言って一枚の紙切れを渡してきた。


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