大空の唄


「え?」


先輩も昨日のことか…


そう思ったのと同時に


"What(何を)"じゃなく"Who(誰と)"を
聞かれたことに驚いた


どうしよう…


空だとは絶対に言えない…


「俺には言えない人?」


「そ、そういう訳じゃなくて…」


そういう訳だけど…


そう素直に言うことも出来ない


少しの沈黙の後


あたしは昨日変な人に連れていかれそうになったことを話した



ただ、助けてくれたのは空じゃなくて
知らない人だと言うことにして…


「そっか…

くそっ…俺が助けたかったな」


え…


先輩の横顔は悲しそうに笑っていた


ただ、首を傾げるあたし


そしていつだって嵐は何の前触れもなく


突然現れる…


「あのさ…俺絢音に
ずっと隠してきたことがあるんだ」


先輩の目は捉えられたら
瞬きさえ出来ないほど真っ直ぐで


心臓が強く高鳴った


「俺…」


冷たくて強い風があたしたちの
横を物凄い早さですり抜けていく


一瞬、何が起こったか理解できなかった


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