大空の唄



繋いだ手が強く握られ
引き寄せられたかと思うと


あたしの体は先輩に抱き締められた


鼓動が聞こえそうなぐらい近い距離


ふわっと香る香水の匂い


「仕方ないだろ、本当に全部なんだから」


きっとドキドキするんだと思っていた


嬉しくてキュンと心が躍るんだと思ってた


しかし、先輩の行動に対して私の胸はきゅーっと苦しくなった


バン


そして気が付いたら


先輩を押し退けていた


唖然と立ち尽くす先輩


「あ…あの…えっと…」


言葉が上手く出てこない


あたしは何を考えているんだろう


何故大好きな人に抱きしめられてこんな思いになって、突き放してしまったんだろう。


その理由はどんなに考えても分からなかった。


でも…


「ごめんなさい…」


あたしは先輩に背を向け走り出した


目から熱くて、でも冷たい何かが溢れくる


先輩は追いかけては来なかった


ずっとずっと…あたしの心の中から
消えないこのモヤモヤは何だろう…?


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