大空の唄


帰りたくない?


意味深な発言…


俺は視線を雑誌から絢音に移した


もう暗闇に包まれた空


それを仰ぐ目はどこか切な気で…


でも表情は穏やかに見えた


コイツはよく俺に言う


『蒼空は不思議なヤツだ』と…


そしてそのたび思うのが


お前も充分不思議なヤツだということ


いつも馬鹿みたいに笑っていて
馬鹿みたいに明るいかと思えば


不意に…悲しげな表情を見せるときがある


何か思い詰めたように、どこか遠くを見据えて…


それは会話が途切れた一瞬だったり


バイトの接客から帰って来た一瞬だったり


爆笑したあとの一瞬だったり


そう、そんなふとした一瞬…


「でも…そろそろ帰ろっかな」


絢音はそう言って勢い良く立ち上がる


その顔にはもう切なさはなかった


「翔、俺らも帰ろっか」


「そうだな」


…俺の、考えすぎ?


3人が部屋を出るのを確認すると


俺は雑誌を置いて立ち上がった


「寝よ…」


こんなこと考えたって答えがでるわけない


それに明日朝 早いし


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