大空の唄
徐々に人ごみとの距離は近づく
翔と陽はすでに人ごみの中に溶け込んで姿が確認できない
ここに来てようやく楽器の音が聞こえてきた
激しく鳴り響くドラム音
低く、優しく音を奏でるベース音
軽快で、歪んだギター音
そしてやわらかに鳴り響く、これはアコギだろう
4ピース、もしくは5ピースバンドか
ただ、間奏なのか歌声はまだ聞こえない
人だかりが出来るだけあって確かに
楽器の技術はなかなかなものだ
そして人ごみにたどり着いた俺は翔と陽が誰かと話していることに気付く
「あ、来た来た。
久しぶり~」
そういって俺の肩を思いっきり叩いたのは梨華だった
梨華がこんなところにいるなんて珍しい
梨華も俺と同じであまり人が多いところに進んで行くやつではない
「いってぇよ馬鹿力
つか、何でこんなとこにいるんだよ?」
「野次馬っ」
語尾にハートマークが着きそうな一言を返され、俺は「あっそ」と軽くあしらうと人ごみの間から少し顔をだし、注目を浴びている中心に視線を移した